From Engine Room

日々のあれこれ(生存報告)
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ぐるぐるまわるすべり台
ぐるぐるまわるすべり台
中村 航
4163230009

 イントロの黄金比の話といい、途中の数学語りといい、理系人間はちょっとにやりとする小ネタがスパイスのようにきいていて、使い方はうまかったです。文章も滑らかで澱みなく、癖もない。テンポの速さと繋ぎのうまさ、シーンの配置が頭の回転の速さを窺わせます。最近流行の薄いハードカヴァの中では割と上の方という出来ですが、正直可もなく不可もない印象。

 大学を止めて塾講師のバイトを続けながらバンドを始めようとする主人公の、行動の背景がよくわからないのが話に感情移入できない一番の要因かと。大学をやめる理由なり、バンドを始める理由なり、少しでも書かれていれば違ったかな。配置やキャラクターがそこそこ面白かったのでちょっと勿体ないと思いました。書き下ろしの「月に吠える」は面白かった。優秀な派遣社員でギタリストの哲郎の気持ちには同感できて、だからこそ表題作「ぐるぐるまわるすべり台」の説明不足が気になる。

 芥川賞をとるほどではないと思っていたら、第130回の候補でしたよ! 『蛇にピアス』ならこっちのがいいな。あの時の候補作で呼んだ中では『生まれる森』が好きだったけど、正直これも完成度は低いような。完成度で問うならうまいのはダントツで綿矢りさの『蹴りたい背中』だと思います。きちんと文章の書き方を学んだ人の書き方をしてる上に、ちゃんとそれをものにしてる感じがする。

 ビートルズの「ヘルタースケルター」が、言われて咄嗟にぱっと頭に浮かぶほど馴染みがなかったので今度TUTAYAで借りてこようと思います。
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蝉しぐれ
 観てきました。いい話だった……! しかし点数つけるなら75点くらいかな、と。

 そもそも蝉しぐれ映像化はかなり難しい。前半部分ないとラストの感動はなくなるし、しかし前半長すぎるとだれる。その点ではバランスはよかったです。しかしやっぱりエピソードが削られているのでちょっとぶつ切りな印象。本を読まないと話が微妙にわからないし、本を読んだらちょっと物足りない。なので映画と思わずイメージ映像と思えば満足でした。画面綺麗だし役者の演技も様になってたし。この作品を監督が相当愛してるのは伝わる作品。

 とりあえず最初に出てきた文四郎少年が男前で吃驚。染五郎から想像してたのでちょっと予想外に系統違い。ふくは可愛かったです。藤沢ヒロインらしい、芯の強そうな上目遣いが出来る子でよかった。
 でもそれより何より木村佳乃がクリティカルヒットでした。イメージまんま! ラストシーンのそっぽ向いて泣くところとか後一押しでもらい泣きしそうでしたよ(因みに同行した友人は横で泣いてました)(涙目で見つめ合うところは私もちょっとやばかった。あと数秒あったら泣いてた)
 あと市川染五郎、意外と若い役いけるな、って思って自分に驚いた……(笑)

 しかしちょっとどうかなと思ったのは、3人組の残り2人。ぶっちゃけ微妙……! 与之助とか出てきた瞬間思わず笑いました。映画館で皆笑ってたからきっと気持ちは一緒。あんなギャグいらないと思います監督!
Shall We Dance?
Shall we Dance ?
リチャード・ギア 周防正行 ピーター・チェルソム
B00067HDVQ

 日本版の記憶が曖昧なんですが、テイストや細かい動きを真似しただけで設定や雰囲気は別物でした。大まかなストーリーとキャスティングのイメージは原作のまま、テンポやちょっとしたイベントがさしかえられている感じ。

 とりあえず観て一番感じたのは、日本が「家」社会なのと違って、本当にアメリカは「夫婦(男女のペア)」で構成される社会なんだな、ということ。勿論日本ほどダンスに対して抵抗はないだろうし、ダンスというものが日常生活から遠いものでもないと思うんですが、それ以上に文化の違いを感じたのがその点。力点は完全に『夫婦』に置かれていて、その違いが少しがっかりしました。原作を観ていなければきっと満足できると思います。両方みたい人はアメリカ版→日本版の順番で観た方が多分いい。基本的にアメリカ映画は後味勝負なところがあって、きちんと起承転結がつくものが多いし、大抵の映画はラストですっきりおちてしまう傾向はあるので、面白いと思っても楽しめても、やっぱりそこが物足りないのかなと思います。印象が薄れてしまう。

 でもリチャード・ギアは格好良くて素敵でした。渋い! ジェニファー・ロペスもとてもよかった。綺麗で可愛いし、ダンスも華やか! 二人が親密になりながら、決して不倫関係ではないのはアメリカ映画らしくなくて好感がもてます。
 CMでも使われていた、リチャード・ギアがタキシードを着て薔薇の花を手にデパートのエスカレータを上がってくるシーンはうっかりときめきました。
es
es[エス]
モーリッツ・ブライプトロイ オリバー・ヒルツェヴィゲル クリスティアン・ベッケル
B00018GYBA

 『ジンバルドの実験』を元ネタに作られた映画。今日社会学系の授業で(多分『役割』について学ぶ材料として)観させられたんですが、もう、ものすごく怖かった!! 明け方まで『インタープリター』観てて二日連続睡眠不足だったので気持ち悪くなった……。
 
 『ジンバルドの実験』というのは、健全な学生を被験者として集めて、ランダムに囚人役と看守役にわけられ、2週間、模擬刑務所でそれぞれの役割を演じてもらうという実験。『役割』を無理やり与えられた人間がどう行動するのかを観察するために行われました。
 何の指示もせずただ監視をするはずだったのに、数日も経つと看守役は看守らしく囚人役は囚人らしく行動し始め、その行動もどんどんエスカレートし、結局6日で中止。あまりに非人道的な実験で、被験者にはPTSDが残ったらしいです。

 そんな実験を元に作られた映画がこれ。中盤まではまるっきりそのまま作られていて、残りは創作らしいんですが、授業なので前半のみ。実験内容は知っていたのに映像になるとなおショッキングでした。普通の人も環境によって狂気に転びうる、という話。そこいらのホラーを観るよりよっぽど怖いです。薦めません(笑)
ザ・インタープリター
ザ・インタープリター
ニコール・キッドマン シドニー・ポラック ショーン・ペン
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 国連の通訳として働く主人公シルヴィアが、アフリカのマトボ(架空の国)の大統領が国連で演説をする際に企てられた暗殺計画を偶然耳にしたことから、その事件に巻き込まれていく話。

 ストーリィがちょっと複雑でわかりにくい印象。設定も恣意的でちょっと首を傾げてしまう。主人公はたまたま話を耳にしてしまったけど、彼女自身の生い立ちや経歴が事件に関わりすぎていて、結局巻き込まれるというよりは最初から入っていたのでは、と思えてしまい、展開は悪くはないけど勿体無い。個人的には可もなく不可もなくな印象。
 しかし二コール・キッドマンとショーン・ペンがそれぞれいい味を出しています。大統領を守るシークレット・サーヴィスと、その過程で監視される通訳、という相対する立場から、同じ悲しみを抱えた人間として徐々に心を通わせていくんですが、恋愛まで発展しないのがリアルでよかった。

 冒頭のアフリカの映像もかなりインパクトが。事前情報をさっぱり知らなかったのでずっとセットだと思ってたんですが、劇中で映っている国連が本物だったらしくびっくりしました。劇映画としては初めて国連での撮影が許可されたらしいですよ。
猛スピードで母は
猛スピードで母は
長嶋 有
4163206507

 文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」と芥川賞受賞作「猛スピードで母は」の2本収録。どちらもちょっと特殊な家族を丁寧にえがいている印象。

 やっぱり読んでいる最中はいまいち何を言いたいのか分からない作風でした。無駄が多いようで、その一つ一つが何か独特の雰囲気を作っていく、酸素多めの空気みたいな本です。意識はせずとも、ちょっと呼吸がしやすくなる。

 世間的には『サイドカーに犬』の方がうけているみたいですが、世代的な問題か、私は『猛スピードで母は』のお母さんが好きでした。北海道で母と二人暮らしをしている慎が主人公。彼とお母さんが日常の中で対面する様々な問題に、斜に構えてクールに対応していくお母さんがとにかく格好良くて素敵。小学生の、子供独特の感覚の描写もうまい。何を教えられるでもなく、ただ母の背から様々なことを考えさせられ、大人になっていく慎の姿が印象的でした。
孤剣
孤剣―用心棒日月抄
藤沢 周平
4101247102

 『用心棒日月抄』シリーズ二作目。前作ラストで帰藩できた又八郎が、再び藩の密命により脱藩の形をとり江戸へ。再び、用心棒稼業で日銭を稼ぐはめになります。

 今回も短編の連作で長編の形。藩の存亡を左右する文書を追うサスペンスと、相変わらずのユーモアと、それに加えて「陰の組」に属する佐知との親交が加わってさらに面白かったです。前回に増して理不尽な目にあい苦労をする主人公が、ちっとも屈折しない、変わりのない爽やかな人柄でやはり好感触。正直、事件の顛末より、やっぱりこっちも薄幸そうな佐知とじわりじわりと距離を縮めていくのを今か今かと見守ってしまいました(そっちか!)
蝉しぐれ
蝉しぐれ
藤沢 周平
416719225X

 やっぱり藤沢周平面白い……! 私の中の、司馬さんに代表されるようないかにもな「時代小説」のイメージを完全に払拭してくれました。勿論舞台が過去である以上、きちんと理解するには当時の常識とか多少の知識は必要とされるとは思うんですが、多分これは何も知らなくても十分に面白いよ!

 短編連作のような形で延々連なる長編なんですが、一つ一つのエピソードも無駄なくすっきりしていて読みやすい。書かれている文章も、出てくる登場人物も、嫌味じゃなく爽やか。
 どこか青春小説めいた主人公の成長物語と見せかけて、ものすごく淡い初恋の顛末を描いた話。もどかしさよりせつなさより、いとおしい、という気持ちが先行する、いい意味で日本人的な「恋」がここにはありました。

 世間では純愛ブームですが、「せかちゅー」なんかよりよっぽどこういうの読めばいいよ! と思ってしまう。特に時代物を忌避してる人に勧めたいです。
瑠璃の契り
瑠璃の契り―旗師・冬狐堂
北森 鴻
4163236600

 《冬狐堂》シリーズ短編集2作目。これは時間軸としては『狐罠』と『狐闇』の後にあたる模様。

 目利きの要となる目を患いながら、それでも《旗師》として仕事を続ける宇佐見陶子。今回もまたまるで彼女が引き寄せるように次から次へと事件に巻き込まれていく。
 表題作『瑠璃の契り』では友人であり仕事仲間でもある横尾硝子に焦点が当たり、それに続き陶子の元夫・プロフェッサーDに焦点の当たる『黒髪のクピド』が印象的。

 話はどんどんミステリとは言い難くなっていき、謎解きというよりは隠されたものを晒していく、ウェットな読後感。その反面、最初に『狐罠』を読んだときに感じたような現実味のなさが薄れて、宇佐見陶子という一人の女性に生活観に似たリアリズムを感じるようになった。シリーズを通して変わらず骨董品を通して人の内側に隠された何かを暴くような話で、その手法は民俗学を扱う《蓮丈シリーズ》と表裏のようになっているのかも。
緋友禅
緋友禅―旗師・冬狐堂
北森 鴻
4163215808

 旗師・冬狐堂シリーズ短編集。時間軸としては『狐罠』と『狐闇』の間になるかと。

 長編と同様、ハードボイルドな雰囲気は変わらず。
 骨董品に関する事件でやたら人が死ぬんですが、どちらかというとサスペンス的な謎解きが多い。話の展開が丁寧な、詰め将棋のような印象。派手なアクションも、はっと驚くような謎解きもない代わり、どこかしっとりとしていて面白い。
 長編では削られてしまうような、登場人物の周辺に関するエピソードが多いので、相互にフィードバックできる。どちらか一方でなくて、長編と短編と合わせて読むのがいいかも。
ロマンス小説の七日間
ロマンス小説の七日間
三浦 しをん
4043736010

 まずは一冊目。一番薄くて読みやすいやつから。

 三浦しをんの恋愛小説、という時点で予想はついていたんですが、やっぱり独特で面白い。こういう二つの世界がある意味混ざっていく展開も好きだし、主人公のあかり(翻訳家)とその彼氏・神名との関係も面白い。個人的にこの二人の付き合いには結構共感できる部分もあり。
 ストーリィのしっとりしたオチもよかった。ついでに翻訳しなくてはならないロマンス小説の原作から離れて、あかりが作った創作ヴァージョンも好みで、むしろこれだけでも私は楽しめた気がする(笑)

 一緒にいよう、神名。冬までは。それから先はわからない。待つという行為は、ちっとも優しくも穏やかでもないものだと思うから。
 変わってしまう。形も心も。だからいい。お互いに見分けもつかないくらいぐらい変化してしまったとしても、いつかまた会える。そう思っておくのが、いいだろう。

 しかし三浦さんはエッセイのテンションと小説との温度差が本当に信じられないよ。
春の雪
春の雪
三島 由紀夫
410105021X

 映画が観たいので読んでみた。三島由紀夫はまだ2~3作しか読んだことないんですがどれももの凄く屈折したキャラクタ造形で酔います。慣れれば割と平気なんですが慣れるまでは読みにくい。

 主人公は我儘で自分の容姿と育ちにプライドを持った傲慢な美少年。幼馴染が好きなのに、そのことを認めることができないが故にずるずると戻れない道へ流されていく。必ず別離の来ることのわかっている恋愛に身を投じて、そして失意のまま病死してしまう。
 こうやってあらすじを書いてしまうとかなりどうしようもない、もどかしい話なんですが、随所随所に三島節全開。現実と思考が交差するような、夢想的で哲学的な議論が嫌いでなければ十分面白いと思います。4部作の1作目なので続きが楽しみです。

 先日映画館で予告編を見て、画面の綺麗さと監督(行定さん!)と主演二人が好きだから、という理由で観る気満々だったんですが、印象とはだいぶ違う話でした。悲恋は悲恋なんだけど、自業自得なので同情の余地はないかも。妻夫木が清顕のそのままの屈折を演じるのか、それとも彼に合った爽やかな美少年になってしまうのか、映画館で確かめたいと思います。
狐闇
狐闇
北森 鴻
4062750813

 《冬狐堂》シリーズ長編2作目。相変わらず受難で薄幸な《狐》さん。今回は蓮丈那智シリーズの二人も登場しファンサービスも満載でした。陶子と那智の対比も面白い。

 《冬狐堂》が骨董市で競り落とした一対の青銅鏡の片方が《魔鏡》に入れ替わったところから事件の始まり。大きな陰謀に飲み込まれそうになりながらも、蓮丈那智を始めとする何人もの助けを借りてそれに対抗していくことになる。
 どうにもミステリと呼ぶには抵抗があるんですが、じわじわと謎を解いていく持って行き方は丁寧で、設定が強引なものの、読みものとして楽しめました。強引な設定の割に動機がチープだったのがちょっと勿体なくて残念。
大学の話をしましょうか
大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル
森 博嗣
4121501950

 中公新書新刊。本当に徹頭徹尾大学について語った本、なんだけど『大学論』という感じではないかも。『臨機応答・変問自在』『臨機応答・変問自在〈2〉』あたりを読んでもうちょっと、という人にはお薦め。少なくとも森先生がどうしてN大をやめたか?」という疑問には余すところなく答えが示されていると思います。個人的には予想通りでした。

 特に新しいことを語っているわけではないけど、断片的に与えられてきた情報を『大学』に焦点を絞ることによってすっきりまとめられた感じ。『臨機応答・変問自在』と並べて本棚に置いておいて、たまに読み返すと思います。
ジャージの二人
ジャージの二人
長嶋 有
4087746771

 知人に『猛スピードで母は』を勧められ、ちょうど図書館になかったので先にこっちを借りてみた。

 ただ淡々と過ぎていく時間の中での、人間の再生(途中)の話。
 売れない写真家の父親と、小説家として泣かず飛ばずの息子が二人、群馬の別荘で夏休みを過ごす。この親子の距離感が妙にリアル。バツ2で今の奥さんともあまりうまくいってない父親は駄目親父というほど駄目でもなく、かといって父親としての威厳もない、中途半端な父親。息子とも、今の娘とも仲がいいわけでも、悪いわけでもない。腹を割って話すわけでもない。
 ただ交わされる会話やほどよい距離が何となく可笑しく、何となく心地いい。

 最初は作者が何を書きたいのかさっぱり分からなくて首を傾げていたんですが、一冊読んだら何となくわかったような気がしました。個人的にはあんまり読んだ感じのしない、空気のような文章で、空気のような本。お薦めされた『猛スピードで母は』を読んでからまた再評価する予定。
悪いうさぎ
悪いうさぎ
若竹 七海
4167679167

 タイトルと装丁を見るとちっともミステリらしくない感じなんですが、後味ものそい悪い立派なミステリでした。『プレゼント』『依頼人は死んだ』に続く探偵葉村晶シリーズ初の長編らしいです。いっそ葉村受難編でもいいと思うくらい今回は満身創痍。

 若竹さんは人間の悪意を書かせたら本当にうまい。完全なる悪ではなく、小悪党や普通の人がうっかり嵌る、そんなちょっとした悪意。短編の読後にひやりとする感覚(ある意味北村薫の師匠と私シリーズに構成は近い)と違って、今回は全編通して根底を流れる感覚が恐い。葉村の感じる嫌な予感を共有して、ページを繰る手が止まらない。

 短編のくたびれたアメリカンハードボイルドな雰囲気よりは、葉村晶という一人の人間に焦点があたっているような印象でした。完璧ではない、完全な大人でもない、欠点も弱点もあるひねくれた性格の探偵。彼女自身が事件に巻き込まれることで自分自身を再発見するが、逆にそのことが物語の中での人間味を増して、その不器用さが愛おしい。

 物語の核となる事件は、現代日本でやるにはちょっと無理がないか、と言いたくなる設定(アメリカならありそう) それがまた恐い。意外なほどの、ぞっとするようなグロさがありました。でも一人称の読みやすい文章と構成のうまさで、勿論後味は悪いんだけど面白かったです。
狐罠
狐罠
北森 鴻
4062086263

 蓮丈先生と対になってるらしい冬狐堂シリーズ一作目。分厚いのに勢いがあって一気に読めました。面白かった! 内容が濃いのに小難しくなかったです。

 メインは贋作での目利き殺し、騙し合い化かし合い。手に汗握るほどのハラハラ感はないにせよ、読んでる内にじわりじわりと冷や汗をかくような展開で息をつけない。骨董業界の恐ろしさを垣間見ることが出来ます。

 ちょっと気になったのは登場人物がやや薄っぺらいこと。話として違和感があるほどではないけれどあまり印象に残らない。生活感、というか、リアリティというか、どうも息遣いのようなものが感じられなかったのが残念です。
依頼人は死んだ
依頼人は死んだ
若竹 七海
4163192301

 やっぱり友人に勧められ手に取った一冊。

 女流作家のミステリってあんまり読まないんですがこれは意外にアメリカのハードボイルド小説っぽいテイストで、でも根底に流れるのは女の人ならではの薄暗さというちょっと凝った感じ。短編連作でどれも読後がひやりとする話ばかりでした。文章は温めなのにどうにも恐い。オチが読めるようで読めず読んでる最中は非常に先が気になります。どうやらこれが女探偵・葉村晶シリーズの2冊目みたいなので一冊目の文庫版でも買ってこようかな。
 読みながらP.D.ジェイムズの『女には向かない職業』とか思い出しました。

 女性特有のどろどろした部分は苦手なんですが、このくらいなら許容範囲。今のところ一番恐かったのは乃南アサのコレですよ。しかも男から「一番お薦め」と手渡され読後本気でビビった(笑)
時生
時生
東野 圭吾
4062751666

 母親からもらい物。「これ面白そうだよね」と囁いて買わせたんですが読み終わった後「私これだいぶ昔に読んだよ!」って怒ってました。何で買う前に気付かないの!(笑)

 東野さんはいつも勢いで読めてしまいちょっと勿体ないなと思うことが多いです。読む価値はあるし面白いけど買うほど好きでもない、というか。今回は2時間弱で読了。

 テーマがすごく好きでした。生きる、ということの価値についてちょっと考えさせられる、いい話。しかし難を言うならもう一ひねり欲しい。私がミステリ好きだからかもしれないけど、いい話で綺麗にまとまり過ぎててこれじゃちょっと記憶に残らない(母親がいい例)

 基本的に文章も話も小綺麗なのがいいところであり悪いところ。綺麗にまとめるならもうちょっと設定や展開でインパクトのある『秘密』とか、捻るなら『ゲームの名は誘拐』とかは面白いのに、全体の印象が凡庸になるから勿体ない。特に後者は設定も捻り方も展開も好みでした。映画は原作に比べたら全然つまんなかったです。
アヒルと鴨のコインロッカー
アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎
4488017002

 ここ数日夜中の読書が日課で気付くと3時4時なのホント勘弁して欲しい……。これも面白かったです。ちょっと読むはずが後半一気に読んでしまった。

 話の作りが上手くなったな、というのがまず最初に思った印象。伊坂作品はまず着想の面白さ、キャラクターのどこかしらピンポイントで独特さ、というのが特徴だと思うんですが、『オーデュボンの祈り』の雑然とした作りから考えれば、単調な二十構想でもかなりの進歩。

 現在大学生の『僕』とその隣に住む『河崎』、そして二年前の世界の『私』と一緒に住む『ドルジ』、元彼の『河崎』、両方に登場する『麗子さん』と、重なるようで重ならない螺旋構造のように進む話。二年前の事件に向かってじわじわ収束していく手法もうまかった! 『僕』に対する『河崎』の態度の謎もすべて伏線で最後にはすっきり。明確にならない違和感をうまく植え付けられてすっかり騙されていました。

 宗教がストーリィに絡むのと、落とし方がちょっと哲学的なのも伊坂作品の好きなところ。今回はタイトルもちゃんと記号化されててうまかった。読まない人には何のことかわからないのに、一度読んだらタイトルだけで話の内容思い出せる。
 今のところ、重力ピエロの次に好きです。その次が『ラッシュライフ』かな。
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